肉の過剰な摂取の現代、健康の原点とは肉食を断つ精進潔斎(しょうじんけっさい)の食生活かも。精進とは生臭い魚類・食肉の料理を避け、潔斎とは身を潔らかにし、身体を清め、汚れを心身ともに避けること。これは仏道の修業で邪念を交えず、心身を清める教え。
鎌倉時代に精進料理の技術が中国から伝わった。坐禅する宗派・禅宗では、生臭い魚類・食肉をタブーとし、菜食中心の精進料理が発達した。
一般人の場合でも、親族の霊の精進の期間が終わると、精進明け、四十九日の忌明けに、魚・肉を食べる精進落とし、さらに、精進を始める前に魚・肉を食べる精進固めなどがある。
通夜の場合、弔問客に対し、故人の思い出を語り合う場として通夜ぶる舞いが行われる。
しかし、近年は精進潔斎に基づく厳格な通夜ぶる舞いが行われていない。一般に、殺生の意識から食肉類はタブー視するも、魚介類は別との考えだ。通夜ぶる舞いの定番は刺身、寿司で、お清めと称して酒類も振る舞われる。
今日、菜食の精進料理は淡白で、ダイエット効果が抜群と、女性に人気が高い。京都の寺社周辺の湯豆腐屋では、連日、大勢の観光客が押し寄せる。
しかし、当然ながら、一食の精進料理を食しただけでは見た目の効果は出ない。寺社詣でを続け、精進料理のリピーターとなれば、ダイエットのご利益にあずかるはず。だが、翌日には精進明けの肉食生活に逆戻りする観光客多し。
(梅花女子大学教授)